結論から申し上げると、認知症の方の帰宅願望は「わがまま」でも「病気の症状だから仕方ない」でもなく、その方なりの不安や孤独のサインです。正面から否定するのではなく、気持ちを受け止めながら「今ここが安心できる場所だ」と感じていただける工夫を積み重ねることが、現場スタッフが実践している基本姿勢です。
9月に入ると、夏の疲れが出やすい時期であると同時に、朝晩の空気がひんやりとしてきて、季節の変わり目特有の不安感や落ち着きのなさが出やすくなります。認知症の方にとってこの季節の揺らぎは、帰宅願望が強まるきっかけになることも少なくありません。今回は、加須市で地域密着型デイサービスを運営するリハスタジオ花咲・リハスタジオプラスのスタッフが日々どんな工夫を実践しているか、具体的にお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 帰宅願望が起きるメカニズムと、否定することのリスク
- デイサービス現場スタッフが実際に行っている具体的な対応の工夫
- 季節の変わり目(秋口)に帰宅願望が強まりやすい理由と対策
- ご家族が自宅でできるサポートとデイサービスとの連携方法
こんな方におすすめ
- ✅ 親がデイサービスで「家に帰りたい」と繰り返して困っているご家族の方
- ✅ 帰宅願望への対応に戸惑い、デイサービスを続けさせることを迷っている方
- ✅ 認知症ケアに関わるスタッフや、在宅介護をされている方
- ✅ 加須市・久喜市・羽生市周辺で認知症対応のデイサービスを探している方

帰宅願望は「不安のサイン」——否定しても逆効果な理由
「もう夕方だから帰らなきゃ」「子どもが待ってるから帰る」——認知症の方がこう繰り返すとき、脳の中では今が何時なのか、ここがどこなのかが正確につかめなくなっています。だからといって「まだ昼過ぎですよ」「お子さんはもう大きいじゃないですか」と事実を伝えても、ほとんどの場合は混乱や興奮を招くだけです。
大切なのは、「帰りたい」という言葉の奥にある気持ちに目を向けることです。慣れない環境への不安、「ここにいていいのだろうか」という居場所のなさ、あるいは昔の役割(夕飯の支度をしなければ、など)が呼び起こす使命感——それらが「家に帰りたい」という形で表れることが多いのです。
リハスタジオ花咲・プラスでは、同じ目線で気持ちを受け止めることを対応の出発点にしています。まず「そうですね、帰りたいですよね」と共感を示してから、次のステップへ。この「まず受け止める」という一手間が、その後の対応の効果を大きく左右します。
また、認知症の進行を遅らせる「頭を使う活動」をデイサービスで提供する取り組みも、日常的な不安感を和らげる土台として機能しています。帰宅願望は、孤独や刺激のなさからも強まることがあるためです。
秋口に帰宅願望が強まりやすい理由——季節の変わり目に注意
9月に入ると、日が落ちるのが早くなり始めます。夕方4〜5時ごろにはすでに空が赤みを帯びてくる。この「光の変化」が、認知症の方の帰宅願望を強めるひとつの要因です。
「夕暮れ症候群」という言葉があるように、夕方になると落ち着きがなくなり、「帰らなければ」という焦りが増す方は少なくありません。夏場は日が長いため症状が目立ちにくかったのが、秋に入って急に出てくることもあります。ご家族が「急に症状がひどくなった」と感じるのもこの時期に多いのです。
また、気温の変化による身体的な不調(疲れ、だるさ、睡眠の乱れ)も、不安感を底上げします。季節の変わり目だからこそ、スタッフ側もより丁寧な観察と対応が求められます。
リハスタジオプラスでは、高齢者が気づきにくい脱水のリスクと水分補給のサポートも合わせて行っています。体調の揺らぎが精神面にも影響するため、身体と心の両面からケアする視点を大切にしています。
✓ ここまでのポイント
- 帰宅願望は「わがまま」ではなく、不安や孤独のサイン。共感から始めることが基本
- 9月以降は日照時間の変化により「夕暮れ症候群」が出やすくなる時期
- 身体的な不調(脱水・疲れ)も帰宅願望を強める要因になるため、体調管理との連動が重要
帰宅願望が強い親御さんをデイサービスに通わせ続けることができるか、不安を感じながらここまで読んでいただいたと思います。「うちの親に合う施設かどうか」「最初の数回をどう乗り越えるか」など、記事では書ききれなかった個別の状況は、お問合せフォームからご相談いただけます。
現場スタッフが実践している、帰宅願望への具体的な工夫
では、実際にスタッフはどう動いているのか。花咲・プラスの現場で積み重ねてきた対応のポイントをご紹介します。
対応の工夫 STEP 1
まず「帰りたい気持ち」をそのまま受け取る
「帰りたいんですね、わかりますよ」と、まず気持ちを肯定します。否定や訂正は一切しません。この一言だけで、興奮が落ち着くことは少なくありません。焦って次の話題に移らず、少し間を置くことも大切です。
⚠️ 「もうすぐ終わりますよ」「今日はここにいてください」など、管理的な言い方は逆に不安を高めるため避けること。
対応の工夫 STEP 2
「役割」や「好きなこと」に意識を向ける
帰宅願望の背景に「夕飯の準備をしなければ」「植木に水をやらなければ」という昔の役割意識がある場合は、その役割を施設内で代替できるものを探します。野菜をちぎる、折り紙を折る、書き物をする——「何か役に立っている」という感覚は、不安を和らげる大きな力になります。
⚠️ 本人が「できない」と感じるような難しい課題は逆効果。その方のペースや得意なことに合わせることが重要。
対応の工夫 STEP 3
外出レクリエーションで「楽しみ」を作る
リハスタジオ花咲では、月2回の「チャレンジクラス」として外出レクリエーションを実施しています。盆栽美術館、秩父34観音巡り、いちご狩り、菖蒲グリーンセンターなど、季節ごとに変わる行き先が、ご利用者様の「次が楽しみ」という気持ちを育てます。
「生きがい活動という毎月2回のイベントが楽しみ。10人規模のスタッフと一緒に回るので安心」
花咲ご利用者様
「次のお出かけはどこかな」という楽しみができると、「今日はここにいよう」という気持ちに自然につながります。特に9月は秋の行楽シーズンの入り口。紅葉や秋の花を目的にした外出は、季節感の回復にもなり認知症ケアの観点からも有効です。
⚠️ 外出には体調確認と安全管理が不可欠。10人規模のスタッフ体制で行う理由はここにあります。
対応の工夫 STEP 4
ご家族と情報共有し、「在宅→デイ→在宅」の流れをスムーズにする
「帰ったら家族がいる」という安心感があると、「帰りたい」という焦りは和らぎます。デイサービスから自宅に戻った後のご家族の迎え入れ方、その日の様子の共有——こうした連携が帰宅願望の対応をチーム全体の取り組みにします。
⚠️ ご家族が「今日どうでしたか」と細かく聞きすぎると、本人が混乱することも。スタッフからの申し送りを活用しながら、ゆったりと迎え入れることをおすすめしています。
「デイに行くのを嫌がる」とは少し違う——帰宅願望のある方をどうデイへつなぐか
「親が認知症で、デイを嫌がっている」というご相談は多いのですが、帰宅願望の強い方はデイそのものを嫌がっているわけではないことがほとんどです。「知らない場所で知らない人に囲まれている」という不安が先に立っているだけで、慣れれば「ここは居心地がいい」と感じていただけることが多い。
大切なのは、最初の数回の体験をどう積み上げるかです。リハスタジオ花咲・プラスでは、初回から無理に「全プログラム参加」を求めず、まずスタッフと顔なじみになることを優先しています。施設長の渡邊もよく言うのですが、「アットホームな雰囲気というのは、意識して作るものではなく、一人ひとりと向き合い続けた結果としてにじみ出るもの」だと。その積み重ねが、帰宅願望の緩和にもつながっています。
「利用者様がいつまでも自宅で生活を続けられるように、まず『ここが安心できる場所だ』と感じてもらうことが私たちの出発点です。帰宅願望は否定するものではなく、その気持ちを大切にしながら、一緒に過ごせる時間を少しずつ積み重ねていく。それが私たちの現場の姿勢です。」
渡邊 隆浩(リハスタジオプラス 施設長)
帰宅願望のある方がデイサービスに慣れていくプロセスには、入浴時のヒートショックリスクを含む高齢者の入浴事故予防のように、身体的な安全が確保されていることも大きな安心材料になります。「ここでは安全に過ごせる」という実感が、居場所の感覚を育てるからです。
まとめ——帰宅願望は「終わらせる」ものではなく「寄り添い続ける」もの
帰宅願望への対応に、完璧な正解はありません。同じ方でも日によって、時間帯によって、季節によって変わります。だからこそ、スタッフが毎日の小さな変化を観察しながら、その方に合った対応を柔軟に重ねていくことが大切です。
リハスタジオ花咲・リハスタジオプラスは、加須市内の地域密着型デイサービスとして、ご利用者様おひとりおひとりのペースを大切にしながら運営しています。「うちの親に合うかどうか分からない」「一度見学だけでもしたい」という段階からでも、お気軽にご連絡ください。
電話でのご相談は 0480-53-7288(営業時間:月〜土 8:30〜18:00)まで。
「毎月2回の外出イベントが楽しみ」と感じていただけるまでの最初の一歩として、まず見学や体験のご相談から始めてみてください。加須市内のご自宅からリハスタジオ花咲・プラスへのアクセスや送迎対応についても、お問合せフォームで確認いただけます。